① 99.99%の意味するところは、集塵機で捕獲できるサイズの大きい微粒子については、バグフィルターでも99.99%捕捉できるということである。バグフィルターで背後に逃がした微小微粒子と気体については、全く捕捉できていない。すなわち、この収集方法ではバグフィルターのセシウム除去率を求めることはできないのである。
② 集塵機はフィルターの原理である「背後に漏らす」ことを作動原理としている以上、バグフィルターで漏らした気体集団について測定することはできない。
③ 結論として、99.99%という数値はバグフィルターのセシウム除去率ではない。セシウムなどを検出する能力がない方法で、バグフィルターでもともと除去できる大きなサイズの微粒子の補足を「確認した」にすぎない。確認したもの内容が違うのである。「99.99%の放射性セシウムが除去されることを確認した」に、科学的根拠はない。
① 前記の飽和蒸気圧における排気ガス中の塩化セシウムの存在量と取り扱う塩化セシウムの濃度が10 桁も違うと、フィルターにとらえられるセシウム量とフィルターから抜け出る「気体」中のセシウム量の比率も10 桁違いとなる。現実の排ガス中でフィルターの背後に抜ける「微小微粒子と気体」であるが、気体に注目すると、気体中では200℃における飽和蒸気圧となる濃度の塩化セシウムが存在する。これを考慮すると、バグフィルター出口の濃度は200℃の飽和蒸気圧で決まるセシウム濃度とみなして良い。すなわち出力はほぼ一定で変わらないのである。入力としてのバグフィルター前のセシウム濃度が10 桁も違うと「計算」上の除去率も10 桁のケタ違いとなり、現実条件を再現するには程遠い実験企画である。実際には気体に加えて微小微粒子中のセシウムが存在するので、純気体中のセシウム濃度に比してケタ違いのセシウム濃度であることを考慮しても、バグフィルター前後の比率は実際の比率とはケタ違いである。現実をこのようなモデルで実験することに、科学的な根拠は見いだせない。従って、この実験結果をがれき焼却の場合に適用することはできないのである。
② さらに、ガス吸収ビンで気体の塩化セシウムを捕捉する方法も定量的測定の保証されない方法である。標準状態での気体の平均自由行程は0.1μm 程度である。その場所0.1μm 範囲から外には出ない。その移動については塩化セシウムの分子の場合は拡散運動に従い、微小微粒子の場合はブラウン運動に従う。気泡の直径が1mm 程度ならば、膨大な酸素・窒素分子に囲まれている。塩化セシウム(あるいはセシウム化合物)分子あるいは微粒子が気泡表面に達し、水に接することにより初めて溶ける。全てのセシウムが水溶性であるとしても、自然拡散に従って気泡表面に達して全部が溶けるまでには1 時間単位の時間が必要である。さらに不溶性の微粒子等は溶けださない。この方法は定量的測定をする目的に適わない方法である。たとえ数値が出てもそれは全体に対して一部でしかない部分量であり、定量的な意味はない。ND だから「ない」と結論付けるのは誤りである。この様子を図7に示す。
③ 以上の「不適切」に加えて本質的欠陥がさらにある。実験条件として記されているように円筒フィルターの温度が200℃として、フィルター通過時の塩化セシウムの飽和蒸気圧は10-9Pa(10-14atm)である。1 回の通過気体量が3000ℓ程度の容積中のセシウムは、全量が捕捉されたとしても、測定下限値0.01mg の5 ケタほども少ない量である。実際の排ガス中には微小微粒子に凝結したセシウムがあるので、気体中の量に比して数ケタ上回るセシウム量が存在する。それを考慮しても計測できるはずのない微小量なのである。
ちなみに、本実験と同様にずさんな実験である下記の2)で述べる実験結果は同じ信憑性が無いにしろ例えば気体中の塩化セシウム量として0.014μg/m3N という値を示す。本実験の検出限界では計測できない排ガス中濃度である。
① この論文は単位系と数値に混乱があり、フォロー不能である。ICP-MSの測定の定量下限として0.01μg/ℓを提示している。非水溶性と水溶性の試料はそれぞれ100㎖及び50㎖に定量している。論文中の結果:表1では当然溶媒容積の少ない方がℓ当たりの精度としては小さくなるはずである。実験で結果ではその精度比率が逆転している。
② さらに、バグフィルター前では69.2ℓ、バグフィルター後では34,500ℓの排ガスを試料として収集している。試料の量に約500倍の比率がある。カスケードインパクターの元素解析には上記分解能(測定限界)が存在する。この測定限界は流した排ガス流量で変化することはない。ところが結果表示ではいきなり流した流量でカスケードインパクターの分解能を割って測定の分解能としている。この分解能の提示は正しくない。
③ 同時にカスケードインパクターの測定量を表示せずにいきなりm3Nあたりに換算している。この方法ではカスケードインパクター試料分析分解能の400倍のCs濃度が検出されても流量の比:約500で割ってしまえばND以下に沈んでしまう。実験の内実はおそらく有意な数値が得られているはずであるが、この誤った数値処理で、バグフィルター後(煙突)での測定結果は全て測定下限とされている。この数値処理方法では測定結果の提示にはなりえないのである。このような結果提示は、99.99%などの高い数値を出すための数値処理と疑わざるを得ない。
④ 実験者はバグフィルター前の測定結果、すなわちgas:0.014μg/m3Nから「バグフィルターにおいてはガス態のものがフィルターを通過し、後段に抜けたとすると」として、バグフィルターの精度を算出している。もしこの仮定が成り立つと、バグフィルター後(煙突)の測定においてもガス態の量は0.014μg/m3Nと変わらないはずである。しかし実験結果の表1などには、その10分の1以下の「測定不能」量が提示される。これは明らかに「仮定」が間違っているか、測定プロセスが不適切であるか、あるいは両者が絡み合っているのかのどちらかである。実際は測定方法が間違っているのである。
⑤ ガス採取における処理過程が高岡氏の論文の図1に提示されている。ガス成分を取り除くとして5%H2O2の層をガスとして通過させている。すでに記したとおり、この方法はガス中の全Csを捉えることは決してない。定量的な溶解度などの試験をするには数時間の規模の時間が必要である。この方法は定量的測定をする目的に適わない方法である。たとえ数値が出ても定量的な意味は無い。
実験結果のバグフィルター前後のガス態のセシウム濃度が異なることは、ガス捕捉方法が不適切であることをよく物語っている。
実験結果は、非水溶性のセシウムはより粒径の小さくなるback up filter で量を増している。気体においても量を増やす傾向がありうる。また表1から全セシウム量は1μm以下の粒子にかなり集中している。この意味からも気体の測定法は重要である。
この実験方法によるガス態中のセシウム捕捉はホンの一部であり、全量捕捉はあり得ない。表1から推測しても一部分しか測定できていない値であるが、同じ値であるべきバグフィルター前と煙突の値から推察するに、表1での気体の測定量は、実際に存在する量の100分の1〜1000分の1程度の可能性がある。したがってバグフィルターの除去率99.87%には科学的根拠が何もない。まして99.99%はもっと根拠の薄い数値である。
最も重要なバグフィルター通過後(煙突)の分析が全くなされていない。加えてガス態中のセシウム捕捉方法は、全量捕捉できるものではない。
⑥ バグフィルターのカタログ上の精度は、粒径0.3μmを90%捕獲程度である。(「バグフィルター」のおさらい−放射性物質の捕捉は期待できるのか:ごみ・環境ビジョン21 理事多田眞:http://www2u.biglobe.ne.jp/GOMIKAN/sun6/no88%20bagu.pdf)
実用段階では精度はもっと悪くなることが予想される。バグフィルターには、後述するように微小微粒子を通過させている証拠がある。仮にバグフィルターの補足力を0.4μmと置くと、上記高岡氏の実験ではbuck up filter の分までバグフィルター通過成分として加えねばならない。バグフィルターの除去率は(空気補足分をそのままの数値にして)約80%、本実験での気体の数値が100分の1であるとすると約70%となる。さらにその上のstage 8 の分までバグフィルターを通過しているとすると50%まで除去率は落ちる。
あくまでバグフィルター自体の除去率を測定により求めるべきであるのに、それができていないのがこの論文である。この論文は基本的な記述に「追跡不能」な誤りがあり、99.99%などとする科学的な裏付けは全くない。
ICRP2007勧告「緒言」には以下のように紹介されている。
委員会の1954年勧告は「すべてのタイプの電離放射線に対する被ばくを可能な限り低いレベルに低減するため、あらゆる努力をすべきである」と助言した(ICRP,1955)。
このことは、引き続いて被ばくを「実際的に可能な限り低く維持する」(ICRP,1959)、「容易に達成可能な限り低く維持する」(ICRP,1966)、またその後「経済的及び社会的な考慮を行った上で合理的に達成可能な限り低く維持する」(ICRP,1973)という勧告として定式化された。
…私は2011年12月から放射能を心配する首都圏の親子約2000人に、甲状腺エコー、甲状腺機能検査、血液一般、生化学を行ってきました。
10歳未満の小児の白血球、特に好中球が減少している。
震災後生まれた0〜1歳の乳児に好中球減少の著しい例がある(1000以下)。
ともに西日本に移ることで回復する傾向がある(好中球0→4500)。
鼻出血、脱毛、元気のなさ、皮下出血、肉眼的血尿、皮膚炎、咳、等々特異的でないさまざまな訴えがあります。
小平は関東では一番汚染が少なかった地域ですが、2013年中旬からは子ども達の血液データも変化してきています。
東京の汚染は進行していてさらに都市型濃縮も加わっています。
市民グループの測定によると東大和、東村山の空堀川の河原の線量はこの1〜2年で急上昇しています。
その他最近私が気になっている、一般患者の症状を記します。
気管支喘息、副鼻腔炎などが治りにくくなっている。転地すると著明に改善する。
リウマチ性多発筋痛症の多発。中高年の発症が増加している。
「寝返りがうてない」「着替えができない」「立ち上がれない」などの訴えが特徴的。
チェルノブイリで記載されていた筋肉リウマチとはこのことか?
インフルエンザ、手足口病、帯状疱疹などの感染症の変化。
当医院が貼り紙等で事故直後から放射能被曝の懸念をしていたことを知っているからでしょうか、多くの患者さんが「今までこのようなことはなかった」「何か普通とは違う感じがする」と訴えます。…注72
1 事故時に放散されるプルトニウムの形態
…燃料物質が原子炉建屋の外に放散されるような事故を考えるならば、そのときの放散されるプルトニウムの形態は、酸化物のかなり細かい粒子であると考えてよいと思われる。このような形態のプルトニウムが原子炉周辺の公衆と接触するのは、事故時に生じたエアロゾルが格納施設から漏れでて外界に放散されるときと考えられる… 仮想される原子炉事故の場合に、最も多くの人が遭遇し、かつ、これらの人々が放射線障害を受ける危険性が最も大きいと考えられるのは、これらのエアロゾルを吸入することによってプルトニウムを体内に摂取する場合である。…
2 吸入されたプルトニウムの代謝
プルトニウムがエアロゾルとして大気中に放散された場合、吸入されたプルトニウムの一部は呼気とともに排出されるが、残りは呼吸器系の各部に沈着する。
(イ)プルトニウム粒子の呼吸器系への沈着
プルトニウム粒子の呼吸器系の各部への沈着の割合は、その粒子の径によって大きく左右され、さらに粒子の気道中での速度を支配する呼吸量によっても影響をうける。一般に、粒子径が大きいものは鼻咽腔に、中位のものは気管、気管支に、更に微細なものは終末気管支および肺胞の部分にまで侵入して、そこに沈着する。一般に、大気中に放出されるプルトニウムエアロゾルは、単一の粒子径のものではなく、種々の大きさのものが混在する。…(別図)
(ロ)プルトニウム粒子の沈着後の行動
呼吸気道の各部へ沈着したプルトニウム粒子は、それがPuO2のような不溶性のときは、一部は鼻汁とともに外部へ、残りは嚥下されて消化管へ移る。気管や気管支に沈着した粒子は、これらの部分の呼吸気道に存在する繊毛により粘液とともに上方へ送られ、咽頭部を経て消化管へ移行するが、このときの速度は非常に速く、数分及至数十分と推定されている。…終末気管支および肺胞に沈着した粒子は、その部位では繊毛による粒子の移動がないため、長い期間そこに留まる。肺胞の壁を構成する細胞の中には、粒子を貪食する作用をもつものがあるので、一部の粒子は貪食され、さらに、その一部は細胞とともに肺淋巴節へ移行しそこに長く留まるものと考えられている。
プルトニウムは、肺臓の各部でわずかではあるが血液中に吸収され、また、貪食されたプルトニウム粒子の一部は、淋巴を介して血液中へ入る。
血液中に入ったプルトニウムは、一部は肝臓へ、他は骨、骨髄に移行する。肺臓に沈着したものは緩慢に減少し、一方、肝臓、骨、骨髄、肺淋巴節では、極めてゆっくり増加する。…
3 問題とすべき臓器
…肺臓は、その機能の重要度からしても、また放射線感受性という点からも重要視すべきであり、とくに吸入後初期には、線量率も肝臓、骨等に比べて著しく高く、また、PuO2の場合、肺胞のプルトニウムによる積算線量は肺淋巴節に次いで大きく、動物実験においても多数の肺癌が認められているので、肺臓は…問題とすべき臓器の一つである。…
①遺伝子の損傷
1)DNA鎖の切断や塩基の損傷
2)遺伝子発現過程(DNAメチル化、ヒストンタンパクのアセチル化・メチル化・リン酸化などエピジェネティクス[DNAの塩基配列の変化をともなわず、染色体の変化によって生じる、安定的に受け継がれうる表現型注46])の損傷
3)(修復されたとしても)遺伝子の不安定化
②細胞膜の損傷
③細胞膜にある各種チャンネルの損傷
④ミトコンドリアの損傷、それによる慢性疲労性障害いわゆる「ぶらぶら病」
⑤細胞内の水分子のイオン化(以下で検討する活性酸素・フリーラジカルによる損傷)
⑥最近クローズアップされてきた問題として細胞外基質(細胞と常に情報を伝達し合い細胞にその機能を指示しているとされる細胞外マトリックスECM)注46の損傷。(われわれの見解では、放射線によるECMの損傷は、放射線による1個の細胞の損傷がその周辺の複数の細胞を損傷するという「バイスタンダー効果」を補説する可能性がある)。
①ヒドロキシラジカル・OHによるDNA鎖の切断、塩基の損傷
②スーパーオキシド(O2・−)および過酸化水素(H2O2)によるミトコンドリアの損傷([Fe-S]クラスタなど)
③ペルオキシ化による細胞膜脂質の損傷
④活性酸素種によるタンパク質の酸化
⑤O2・−はリウマチ、心筋梗塞、糖尿病などさまざまな疾病の原因となる(例えば糖尿病患者の赤血球ではSODに多くの糖が結合しSODの活性が低下する)
⑥老化の原因となる
⑦筋萎縮性側索硬化症(ALS、ルー・ゲーリック病)は活性酸素を解毒する酵素(SOD)の変異に由来する
⑧パーキンソン病を引き起こす可能性がある